【プロ解説】ピラティスとヨガの「効果的な順番」!併用する際の注意点と違い

ピラティスとヨガ、どちらも心身を整える素晴らしいメソッドですが、経験を積むほど「どのように併用するのが最も効果的なのか?」という疑問にぶつかるでしょう。
本記事は、既にどちらか、または両方を実践している中級者のあなたへ向けた専門的なノウハウ集です。プロの視点から、両者の根本的な違いから、効果を最大化する「実践的な実施順番」、そしてワンランク上の身体操作へ進むための「併用の注意点」まで、具体的かつ専門的に解説します。
あなたのトレーニングの質を劇的に向上させ、より高い効果を目指しましょう。
1:ピラティスとヨガ、その「根本的な違い」を再確認

既にピラティスやヨガを実践されている方にとって、両者の違いは感覚的に理解できているかもしれません。しかし、効果を最大化するためには、その違いをより専門的かつ理論的に整理し直すことが重要です。この根本的な違いを明確にすることで、「なぜこの順番でやるべきなのか」という理由付けが明確になり、トレーニングの質が劇的に向上します。
【目的の違い】リハビリ志向のピラティスと精神性・統一志向のヨガ
両者のルーツを辿ると、その目的の違いが浮き彫りになります。
| 要素 | ピラティス(コントロロジー) | ヨガ(Yoga) |
| 誕生背景 | 第一次世界大戦中の負傷兵のリハビリ | 古代インドの修行法・哲学 |
| 主な目的 | 身体の機能回復、体幹の安定、アライメント(骨格配列)の修正 | 心と体と魂の統一(悟り)、精神的な調和 |
| 志向性 | リハビリ・身体調整志向 | 哲学・精神志向 |
ピラティスが「肉体的な健康と制御(コントロロジー)」に重点を置くのに対し、ヨガは「心身の統一」というより深い精神的な側面に根ざしています。この違いを理解することで、あなたが「何を改善したいか」によって、どちらをメインにするべきか、あるいはどちらの要素を取り入れるべきかが見えてきます。
【動きの違い】体幹への意識vs. ポーズ(アーサナ)による全身のストレッチと強化
実際にマットの上で行う動きにも、明確な違いがあります。
- ピラティス: 動作の目的は、常に体幹(コア)を安定させた状態で、四肢を正確にコントロールすることにあります。動きの範囲(可動域)よりも、動きの質(安定性・正確性)が重視され、一つの動きに集中してインナーマッスルに働きかけます。
- ヨガ: ポーズ(アーサナ)を保持することや、ポーズからポーズへの流れ(ヴィンヤサ)を通じて、全身の柔軟性と筋力を統合的に高めます。特に、特定のポーズをとることで、関節の可動域を広げたり、全身の主要な筋肉をストレッチ・強化したりします。
このため、ピラティスは土台作りや弱点の補強に適しており、ヨガはその土台を使って表現力を高める段階に向いていると言えます。
【呼吸法の違い】胸式呼吸と腹式呼吸がもたらす効果の違い
呼吸法は両者のメソッドにおける「鍵」ですが、その使い方には大きな違いがあります。
- ピラティス(胸式呼吸): 腹筋群(腹横筋など)を締めた状態をキープしながら、主に肋骨の拡張と収縮で行う呼吸法です。これは、体幹の安定化をサポートし、インナーマッスルを働かせやすくするために重要です。
- ヨガ(腹式呼吸、ウジャイ呼吸など): 腹部の動きを伴う腹式呼吸や、喉を締め音を立てるウジャイ呼吸などが代表的です。これらの呼吸法は、自律神経に働きかけ、心拍数を落ち着かせたり、ポーズのキープに必要なエネルギーと集中力を高める役割を果たします。
あなたが「体幹の安定性」を高めたいならピラティスの呼吸法を、「精神的な集中力」を高めたいならヨガの呼吸法を、意識的に使い分けることが重要です。
2:効果を最大化する!実践的な「最適な実施順番」パターン

多くの経験者がぶつかるのが「同日または短期間で併用する際の最適な順番」という壁です。結論から言えば、どちらを先にやるかに「絶対的な正解」はありません。あなたのその日の目的や、身体の状況によって効果的な順番は変わります。ここでは、プロの視点から推奨される、効果を最大化するための具体的な実施パターンと、週間スケジュールへの落とし込み方を解説します。
【基本パターン】「ピラティス→ヨガ」で得られる相乗効果
もし迷ったら、まずこの順番を試してください。多くのプロが推奨する、身体のパフォーマンス向上を目指すための最も王道なパターンです。
体幹安定後の柔軟性向上とアライメント修正効果
- ピラティスで土台を築く: 最初にピラティスを行うことで、意識が届きにくいインナーユニット(コア)を「起動」させます。これにより、骨盤や背骨のアライメント(骨格の正しい配列)がリセットされ、安定した「土台」が築かれます。
- ヨガで効果を深める: 土台が安定した状態でヨガのポーズ(アーサナ)を行うと、不安定な体勢で無理に柔軟性を高めようとすることがなくなります。結果として、正しいフォームでより深く、安全にストレッチや強化が行えるため、ヨガの効果を底上げし、怪我のリスクを大幅に減らすことができます。
こんな目的の方に最適: ポーズの安定性が欲しい、深い前屈やツイストを安全に行いたい、体幹の力をポーズに活かしたい。
【疲労回復・リセット重視】「ヨガ→ピラティス」が有効なケース
基本パターンとは逆の順番ですが、特に疲労感や身体の硬さが強い日には非常に有効なアプローチです。
全身を緩めた後のインナーマッスルへの集中
- ヨガでアウターマッスルを解放: 先にヨガ、特に緩やかなフローやリラックス系のアーサナを行うことで、日頃の活動で固まったアウターマッスル(表層筋)や関節の緊張を和らげ、全身を一度リセットします。
- ピラティスでピンポイントに再教育: 全身が緩み、リラックスした状態からピラティスに移ることで、アウターマッスルの「頑張りすぎ」を抑制しやすくなります。これにより、本当に働かせるべきインナーマッスルに集中しやすくなり、繊細なコアへの働きかけがより効果的になります。
こんな目的の方に最適: 慢性的な肩こりや腰の張りがある、精神的なリラックスを重視したい、繊細なコアの感覚を掴みたい。
【週間スケジュールでの効果的な取り入れ方】頻度と間隔の考え方
同日に連続して行うだけでなく、週単位で戦略的にプログラムを組むことが、中級者には重要です。
- 意識すべきは「分散」: 理想は、間に休息や別種の軽い運動を挟むことで、一つの刺激に身体を慣れさせすぎないことです。例えば、月曜にピラティスで土台を固め、水曜にジョギングなどの有酸素運動を挟み、金曜にヨガで全身を統合するという流れです。
- 頻度のバランス: 自身の「弱点」を補強する方にやや高めの頻度を割きましょう。「体幹の弱さ」を感じるならピラティスを週2回、「柔軟性の不足」を感じるならヨガを週2回、というようにメリハリをつけます。
- 休息日を設ける: どちらも集中力を要するメソッドです。週に1~2日は「完全休息日」や、散歩などの「アクティブレスト」を設け、身体と神経系を回復させることが、長期的な効果の鍵となります。
3:より高い効果を目指す中級者が知るべき「併用の注意点」

ピラティスとヨガを併用することで得られる効果は計り知れませんが、熱心に取り組む中級者ほど、見落としがちなリスクや落とし穴が存在します。両方のメソッドを深く掘り下げるからこそ、自身の身体をより安全に、かつ効率的にマネジメントするための重要な注意点をプロの視点から解説します。
オーバーユース(使いすぎ)を防ぐ!体への負担のチェックポイント
「もっとやれば、もっと効果が出る」と考えがちですが、ピラティスもヨガも身体の深部に集中力を要するため、知らず知らずのうちに疲労が蓄積しがちです。
- 関節のサインを見逃さない: 特に股関節や肩関節は、ヨガでの深いストレッチとピラティスでのコア固定による操作の両方で、過度な負荷がかかりやすい部位です。「疲労によるダルさ」ではなく、特定の動作で「鋭い痛み」や「引っかかり」を感じた場合は、オーバーユース(使いすぎ)のサインです。
- 集中力の低下: 動作の途中で集中が切れたり、呼吸が浅くなったりするのは、神経系が疲弊している証拠です。そのまま続けると、フォームが崩れ、体幹ではなくアウターマッスルに頼る「代償動作」が発生し、怪我に繋がります。
- 休息を「トレーニングの一部」と捉える: 経験者は、トレーニングの量よりも「質」と「回復」を重視すべきです。週に1〜2日の完全なオフや、質の高い睡眠を確保することが、効果を定着させるための最重要チェックポイントです。
目的に合った「指導者の選び方」と情報連携の重要性
両方のメソッドを行う場合、異なる指導者から学ぶことが多いため、情報連携が極めて重要になります。
- 指導者の専門性を確認する:
- あなたの主要な目的が「リハビリや機能改善」であれば、ピラティスでは理学療法士などの医療系資格を持つ指導者を選ぶ。
- 「精神性やマインドフルネス」を重視するなら、ヨガでは哲学や呼吸法に精通した指導者を選ぶ。
- 「何を補強しているか」を伝える:ピラティスの先生には「ヨガで柔軟性を高めすぎた部分をピラティスで安定させたい」と伝え、ヨガの先生には「ピラティスで得た体幹の安定をポーズに活かしたい」と伝えてください。指導者にあなたのトレーニング全体像を理解してもらうことで、一貫性のある、より的確なアドバイスが受けられます。
自身の「弱点」を理解し、どちらで補強するかを明確にする方法
中級者の次のレベルアップは、自己の客観的な分析から始まります。どちらのメソッドが、あなたの身体の「弱点」を補強するのに最も効率的かを明確にしましょう。
| 身体の課題(弱点) | 優先すべきメソッド | 理由 |
| 体幹の不安定さ | ピラティス | インナーマッスルを分離・集中して鍛え、安定した土台を再構築するため。 |
| 特定の筋肉の弱さ | ピラティス | ターゲット部位に負荷をかけ、筋力を集中的に強化するため。 |
| 柔軟性の不足 | ヨガ | ポーズのホールドにより、全身の結合組織やアウターマッスルを広範囲にストレッチするため。 |
| 集中力・マインド面の課題 | ヨガ | 呼吸法と瞑想的な要素により、自律神経や精神状態を整えるため。 |
あなたの目的に合わせて、「今日はヨガで全身を緩め、明日はピラティスでピンポイントに体幹を立て直す」といった戦略的なプログラムを組むことが、高い効果への最短ルートとなります。
4:【プロの視点】ピラティスとヨガを掛け合わせた「ワンランク上の身体操作」

ここまでのステップで、両者の違いと効果的な順番、そして併用の注意点を理解しました。最終段階として、これらの知識を融合させ、「ピラティスだけ」「ヨガだけ」では到達し得ない、ワンランク上の身体操作を習得するための応用テクニックを解説します。これは、二つのメソッドのメリットを意図的に掛け合わせる、プロならではの視点です。
ピラティスの「安定性」をヨガの「難易度の高いポーズ」へ活かす
多くのヨガ経験者が直面するのが、難易度の高いポーズ(アームバランスや深いねじり)で、「形は取れるが、安定しない」という問題です。ここでピラティスで培った「安定性」が決定的な役割を果たします。
- コアの固着ではなく「起動」: ピラティスで教わる腹横筋や骨盤底筋の「締める感覚」は、ヨガのポーズにおける揺るぎない土台となります。ポーズに入る前に、ピラティスの原則に基づきコアを「起動」させることで、手足の力を最小限に抑え、体幹でポーズを支えることが可能になります。
- アライメントの正確性: ピラティスは常にアライメント(骨格の正しい配列)を意識します。この正確な感覚を、ヨガのポーズに持ち込むことで、「形を真似る」のではなく、「骨格の構造でポーズを保持する」ことができるようになり、結果としてポーズの美しさと持続力が向上します。
【応用例】 逆転のポーズ(シルシャーサナなど)に入る際、ピラティスの呼吸で腹筋群を最大限に活用し、背骨を長く保つ意識を持つことで、首への負担を減らし、安定性が増します。
ヨガの「マインドフルネス」をピラティスの「集中」に深める
ピラティスが「コントロロジー(制御学)」と呼ばれるように、高い集中力が求められますが、その集中力を深めるためにヨガの要素を活用します。
- 呼吸による「今、ここ」への意識: ヨガで養う「呼吸と動作の一致」、そして「今、ここに集中する(マインドフルネス)」感覚は、ピラティスの精密な動作を行う上で強力な武器となります。動きの回数や見た目ではなく、「このインナーマッスルが今、働いているか?」という感覚に意識を深く向けられるようになります。
- 代償動作の抑制: 高いマインドフルネスを持つことで、ピラティスの動作中に「代償動作(目的の筋肉が使えないために他の筋肉で補う動き)」が発生した瞬間を即座に感知し、修正できます。これにより、無駄な力を抜き、ターゲットとなる筋肉のみを効率よく使うことが可能になります。これは、ピラティスの効果を劇的に高める秘訣です。
【応用例】 ピラティスの「ハンドレッド」を行う際、ヨガの呼吸法で学んだ深い呼吸に集中することで、腹部のインナーマッスルへの刺激を保ったまま、辛さや体の震えに意識を奪われることなく動作を完遂できます。

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